ひとり旅を始めたきっかけはとうらぶコラボで刀鑑賞に行ったことだった

ひとり旅を始めたきっかけはとうらぶコラボで刀鑑賞に行ったことだった

2020-05-14

ひとり旅が好きだ。

もちろん誰かと一緒に行く旅行も好きだけれど、1人で好き勝手に回る旅は時間を気にしない、ただ自分のためだけにある時間になる。

今は行きたいと思えば出発の1週間前に飛行機のチケット取ったり、前日に新幹線の予約を入れたりとこなれた感が出てきた一人旅だけど、そうなるまでになる最初の切っ掛けをの話をしていこうと思う。

(写真は2016年に撮影したものなので画質が粗いです)

ひとり旅を始めたきっかけはやむを得ずだった

私がひとり旅を始めたのは今から約4年くらい前。

鶴岡に行きたかったことに遡る。

鶴岡、聞いたことはあるだろうか。

山形県にある鶴岡市のことである。

当時「侍の美」という企画で「酒井家の秘宝」という特別展示がその鶴岡市にある致道博物館で開催されていた。

そこでなんと、歴女である私の心を揺さぶったゲーム『刀剣乱舞』(以下とうらぶ)とコラボをしていたのだ。

信濃藤四郎

酒井家に伝わる短刀である。

この刀のお目見え、公式のとうらぶのコラボであったがために描きおろしイラスト。そして等身大パネルの設置。

お土産も信濃くんのイラストを使ったものやグッズ展開があったり。

お茶室でのコラボのスイーツ提供。

町を挙げてのコラボメニューのランチやスイーツが出されていた。

これだけで行きたい。

また、歴女でありノスタルジックな建物も好きな私には、致道博物館の外観を見過ごすことは出来なかった。

古い建築を移築して保管しながら使用している。

しかも明治時期や大正時代辺りの。

建物自体を使って博物館としているのだという。

外も中も博物館。

コラボもさることながら、その全体にも惹かれてしまったのである。

ただ、ここで問題が挙がった。

平日しか行ける時間が無かったのである。

また自分の推しではないキャラクターとのコラボに友人を巻き込んで良いものか…という葛藤。(ちなみに私の推しは歌仙兼定。目黒の永青文庫に保管されている)

さらに鶴岡という地。

横浜からだと3時間半くらいかかる。しかも新幹線だけではたどり着けず、新潟で特急に乗り換えなければならない。アクセスがあまりよくないのだ。

さらにちょっと大きな声では言えないけれど有名な観光地というわけではない(すまぬ…)。

これらから友人を誘うという選択肢が早々に消えたのであった。

これまでひとりで旅に出るだなんてことはしたことがなかった。

「誰かと一緒じゃなきゃムリー」とか言っていた。

そんなメンタルだったからすごく不安と心配で決断の直前まで何度もググっていた。

「女性 一人旅」「一人旅 暇」「一人旅」「一人旅 ごはん」「一人旅 メリット」みたいなこと。

結果、どれも最終的には「道中は一人で暇だけれど、自由で楽しい」に行きついたのだ。

不安はあれど「一人でカフェに入れるなら大丈夫」だと言い聞かせて、日本旅行 日本旅行のサイトの一人旅プランのボタンを押していた。

もう後戻りはできない。

日本旅行

鶴岡駅から一人でタクシーに乗ったら、プチ観光してくれた

当日は一眼レフを背負って鶴岡に足を踏み入れた。

目的は致道博物館ただ一択しか決めないで。

鶴岡駅に着いて早々、肝心の目的である博物館までの道が分からない。

スマホで調べるとバスがあるらしい。

駅前のバス停で時間を確認すれば1時間に1本あるかどうかだった。しかも直近は行ったばかり。

次は1時間後?近くにカフェ…見当たらない。

歩けるみたいだけど道が良く分からない上に徒歩20分…?

歩くという選択肢は早々に消えた。

そう。目の前にいるではないか!

タクシーが。

タクシーに乗って行き先を告げれば「お姉さん刀見に来たの?」と早々にバレた。

それもそう。この致道博物館、このコラボの初日で年間の来場者数を1日で超えたのだという。

若い女性が長蛇の列を作って博物館に入っていく(今まで来場者がここまで並んで入るということはなかったという)様はちょっとしたニュースになっていたらしい。

一人で来たからか、すごくタクシーの運転手さんはよく話しかけてくれた。

致道博物館に行くまでの道中も「この道を行けば○○だよ」とか、「鶴岡は西郷隆盛と縁があるから姉妹都市だよ」とか「帰り道はこの道を真っすぐ行けば駅に着くよ」とか、「ここは〇〇の撮影とかで使われたよ」とか。

一番心躍ったのは「あそこ今の酒井家のご当主の家だよ」だった。

時が時ならお殿様である。すごい。

ちょっとした観光案内だった。

無事に目的地に着けば平日の真っ昼間で、このコラボが始まってからは結構時間がたっていたからか人がいなかった。

ほぼ貸し切り状態である。

初めて訪れた致道博物館は歴女で刀女子にとってはまさに夢の場所だった

旧西田川郡役所。

旧西田川郡役所

この中の2階は明治時代へトリップしたかのような内装展示だった。

かつてめちゃくちゃハマった『明治東亰恋伽』の世界のようだった。貴婦人のドレスや女学生の衣装。軍服、俥など。ちょっと愛知にある明治村に来たみたいだった。

ここだけで一人で20分くらいいた。妄想し放題である。これが誰かと来ていたらサラッと見て終わっていた。きっと5分くらい。

ここだけで満足度がすごかった。外装は背中のリュックから取り出した一眼レフで収めて、旧庄内藩主御隠殿へ向かった。念願の描きおろしイラストとご対面である。

描きおろしイラスト。

信濃藤四郎描きおろしイラスト2016

普通に写真が撮れた。これが東京なら、コミケのコスプレイヤーに群がるカメコみたいな囲み撮影になるのに、私しかいない。撮り放題というご褒美。

快適過ぎて怖い。

この建物の中に休憩所(カフェ)がある。ここで「菓士 信濃藤四郎」を頂いた。

菓士 信濃藤四郎

空いていれば1組だけ、この建物に元からある茶室に通してもらえるのだという。

もちろん貸し切り状態のこの日は、そこに通してもらった。

アラサー女子がひとりで茶室を占拠し、日本庭園を見ながらお茶と和菓子を個室で頂くという…なんと贅沢なティータイムだろうか。

写真撮り放題である。

茶室
致道博物館茶室からの風景

連れがいないというのは、時間を気にせず何度でも撮影しなおせるという美味しい状況であった。

刀鑑賞は歴史は歴史を感じる有意義な時間である

やっとメイン、刀の鑑賞である。

会場内のど真ん中にガラスケースの中に鎮座している信濃藤四郎。

短刀と言うには少し長めの刀身だなという印象。

刀の鑑賞って刃紋とか切っ先とかその辺りを見て「はわわ…」ってなると思うんだけど、実は私はその辺りがいまいち分からない。

照明の当たりや刃の肌感は難しい。説明しろと言われても「綺麗だった…」としか出てこない。

私自身はあれば刀の解説書(漢文のものや古文で書かれたもの)を見るのが好きなのだ。

「きらきらしてる」とか「これをキャラクターで表したのか」とか感想は多分、本当に刀鑑賞をご趣味にされてる方からしたら「このにわかが!」とか言われかねないものなんだけど、それでもやっぱり歴史を感じるのは事実で。

その刀が持つ物語を感じるのが好きなのである。

刀を見ながら、同じ空間に展示されてる古文書とか絵巻物とか読解するのって楽しい。

でもほとんど漢文で書かれてるから解読するのに時間がかかる。

そう、英文を読み下すかのごとく。

これやってると20~30分くらい展示品の前から動けないから1人で来る上に状況的に他にお客さんがいないっていう環境でないと難しい。今回は幸運だった。すべての条件がそろっていた。

辞書無いと正確には読めないけど、ある程度は予測で読める。大学時代に2年間『小右記』を原文で読まされたのが功を奏している。当時は何故漢文を原文で読ませるのか…とか辟易してる部分もあったけど、現在その知識が活かされてる。先生ありがとう。

当時の資料とかが読めると刀と刀にまつわる人物とか、直接的には関係ないけど置かれている展示品の方向性とかが見えて来るのちょっと面白い。

これも誰かといると正確には把握できないから一人できて一人で感じるのは、実はとても有意義な時間なのではと思う。

そんなこんなで歴女を遺憾なく誰にも見咎められることもなく発揮して、等身大パネルやグッズ、「あなたはどこから来ましたか」アンケートを見てその日は終わった。

致道博物館の信濃藤四郎等身大パネル

トータルで半日いた。

ひとりだからこそ出来る時間の使い方であった。

その帰りにタクシーで教えてもらった丙申堂・カトリック教会をカメラ散歩して駅前のホテルへと行った。満足するまでカメラと向き合えるのすごい。一人で行くと空いていたからか手厚く説明してくれるのすごい。

そして大抵「横浜から来た」というと「こんな田舎に何しに!?」と言われる。

「刀鑑賞に」

答えは決まっていた。

ひとり旅の最大の難関は夕食?意外とそうでもない自由さがある

ひとり旅の最大の難関は「夕食」だとどこかのブログで見た。

けれど、私の場合は誰かと来ていないからと近くにあるスーパーの中のサブウェイでテイクアウトして終わった。

一人だと適当でも許されるうえに、ベッドでゴロゴロしながら地方のテレビ見て、ご飯食べて、ゲームして、好きな時間にお風呂入るっていう、もはやご褒美だった。

ひとり旅2日目は自由という名の時間つぶしだった

ひとり旅2日目。

この旅の目的は1日目にして達成されてしまった。

どうしよう。

10時にチェックアウトでホテルを追い出されてしまった。

帰りの特急まではまだあと6時間くらいある。辛い。

急遽調べて、コラボのランチをやってるお店を目指す。

けれど10時…まだランチには早い。

ちょうど天候も悪くなってきて雨まで降って来た。

そうだ、致道館を目指そう。

致道博物館の近くにある施設、致道館へと足を向けた。

致道館での妄想と本丸みたいな建物での邂逅

致道館。

正式名称は庄内藩校致道館である。

文化2年(1805年)に酒井家9代目ご当主が創立された学校だという。

入り口が本丸みに溢れていた。

妄想の中で蜻蛉切あたりが「主のご帰還である」って言ってた。

致道館の入り口
致道館 外装

中は畳張り、大きな衝立があったりまさに日本家屋のお手本のような、やっぱり本丸だった。

致道館

学校ということもあり、その教えが残っているんだけどまさにリベラルアーツの走りだった。すごい。

生徒一人ひとりの個性を伸ばすってやつ。

この時代から、その考えがあるってすごい。何だか途中第二次世界大戦とかあって教育ってものがおかしくなっていたけど、元をただせば江戸時代からその考えがあったんじゃんって感慨深くなりながら、ここでも2時間くらいいた。

なぜなら史書も漢書もあったのである。

後漢書

約7年ぶりの邂逅。

卒論でお世話になった書物たちだった。懐かしすぎて、読めるところだけ読んでいた。

やっぱり時間がたっていた。怖い。

誰も連れていなくて良かった。

荘内神社の特別御朱印

次に荘内神社に立ち寄った。

ここにも等身大パネルがある。

信濃藤四郎 等身大パネル1

そして神社の計らいでオリジナルの「信濃藤四郎ご朱印」がある。

お参りして頂きました。

刀紋が押されている特別ver.だった。

かわいい。

Cafe studio CINQで藤四郎ランチ

お昼時。

Cafe studio CINQで藤四郎ランチなるものを注文した。

旗が「侍の美」だった。

藤四郎ランチ

アニカフェみたいなあからさまなメニューではないけれど、すごく美味しかった。

窓際の席を陣取って、雨上がりの景色を見ながらお昼を食べる。一人で。

結構楽しい。

ちょっと離れた席で同じ審神者らしき方たちの会話まで聞こえる昼下がりだった。

駅から少し遠くまで足を伸ばしたから、あとは駅までお散歩である。

なんやかんやであと2時間強。

ゆっくり歩いて、わざと色々道を通ったりして景色を楽しんだ。

一人だからこそ出来たこと。

途中迷ったり、何故か映画館入り口まで行ったり、絶対地元の人しか行かないだろう神社とかお参りして、あとは駅前から少し歩いたところにあるフルーツ屋さんがやっているカフェに入った。

フルーツショップ青森屋でカフェメニューを頂く

果物屋さんがやっているお洒落なカフェ。

入り口はまんま、昔ながらの果物屋さんだった。

ツイッターで事前情報が無ければ素通りするくらいの。

でも実際に入ってみれば、白を基調としたお席。

フルーツタルトを頼んで待っていると、すごくインテリアが可愛いことに気づく。

フルーツタルト 青森屋
青森屋 内装

1人席だと壁際一択だったけれど、誰かと来ていたらソファ席とか色々あったみたい。

ここはちょびっと一人だと寂しかったかな。

でもタルトはめちゃウマだった。

さいごに

お土産でも買って…って思っても、実際鶴岡駅前にお土産屋さんは無い。

無いわけじゃないかもだけれど、普段「お土産やさん」として見るような特化したお店は見当たらなかった。

結局致道博物館でグッズ買ったし良いかと思い、そのまま特急へ。

帰りは窓際。

美しい日本海を眺めながら帰路へと付いた。

車窓からの日本海

行く前までは何度も「女性 一人旅」「一人旅 暇」「一人旅」「一人旅 ごはん」「一人旅 メリット」を調べては悩みを繰り返していた。

けれど実際行ってみたらどうだろうか。

時間の制約も行き先の衝突も我慢もない。

この体験がひとり旅の魅力に憑りつかれたきっかけだった。

今では行きたいと思えば九州だろうが何処だろうが、国内ならいける。

割と本気で。

また自由に旅に出れるようなったら、自由気なひとり旅に出たいものである。